札幌の佐藤です。
電磁波兵器について、いくつかの種類があるので
大雑把にまとめていました。
記憶を頼りに一気に書いたので、細かい部分で間違いが
あるかもしれませんが。大筋では間違っていないと思います。
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「電磁波兵器」について
1.電子レンジ的な“殺人光線”
元々、「電磁波兵器」は対人殺傷用の“殺人光線”として開発努力が行なわれまし
た。日本では第二次大戦中に理化学研究所・仁科研究室が原子爆弾の研究委託を受けてい
たのですが、実用可能な高濃度のウラン同位体を分離しようとすれば数十年はかかるだろ
うということで、理論的に無理だという結論になりました。(このあたりの話は、中公科
学選書で出て絶版となり、今では岩波から再刊された広重徹著『科学の社会史』に詳しく
紹介されています。)
理研・仁科研究室で「不可能」とされた原爆をアメリカが作ったのは、少数の分離施
設なら数十年かかるものを、めちゃくちゃに大規模な施設にして、わずか数年で仕上げて
しまったわけですが……。
とにかく理研では原爆開発がうまくいかないので、その埋め合わせに、海軍第九研究
所(たしか明治大学にその跡が残っていたと思いますが)が着手した“殺人光線”開発計
画を精力的に進めました。これは現在の電子レンジの原型ともいうべきもので、巨大なマ
グネトロン管からマイクロ波を空中に放射して、飛来するアメリカの爆撃機を焼き落とす
のが最終的な目標だったそうです。しかし電子レンジをみればわかるように、それには途
方もない電源が必要なわけで事実上は不可能な、荒唐無稽な話でした。もっとも、仁科研
ではマグネトロンで小動物(たしかウサギだったとおもいますが)を焼き殺すことまでは
成功していたとのこと。ちょっとした電子レンジだった、というわけ。
電子レンジ(microwave oven)そのものは、レーダーの近くで作業をしていると身体
に熱感を感じる、という第二次大戦当時の技師たちの体験がきっかけで、マイクロ波の熱
作用が注目され、それを応用する形で開発されたわけです。
いっぽう、戦後の日本では、電気エネルギーをマイクロ波に変換して遠方に送るとい
う応用のかたちが考案され、たしか京都大学の工学部だったと思いますが、電気モーター
でプロペラを回して飛ぶ模型飛行機に“マイクロ波発射砲”の照準を合わせ、マイクロ波
を照射して、これを飛行機の側で電流にもどしてモーターを回して飛ぶ、という実験を行
なっているのが、数年前にテレビで紹介されていました。
電子レンジはマイクロ波による熱作用で物体に損傷を及ぼす装置です。つまりマイク
ロ波を長時間あてていると、物体のなかの水分子の運動が誘発されて、熱で物が暖まるの
とおなじ効果を生み出すわけです。こうして物体は内側から“温められる”というわけ。
つまり熱作用は、実際には長時間マイクロ波を浴びていなければ生じません。
2.電子回路を焼き切る“電磁パルス兵器”
現在“実用化”されている「電磁波兵器」は、上記の“電子レンジ”とは用途がちが
います。その最も基本的な発想は、強力な電磁パルスを瞬間的・爆発的に発射し、それに
よってパルス到達範囲内にある電子回路に強力な誘導電流を発生させ、電子回路自体を破
壊する、というものです。つまり軍事における指揮・統制・通信・コンピュータ系統の破
壊を狙うわけです。電子レンジでも、レンジの中に金属製のスプーンなどを入れてマイク
ロ波を当ててみるとわかりますが、激しく火花が出たりします。(うかつに実験すると危
険ですけど。) スプーンだから火花で済みますが、ラジオなんかをレンジにいれていた
ら、一発でオシャカですよね、電磁波兵器はそれを狙うわけです。
電子回路を破壊する兵器としての「電磁波兵器」は、そもそも、大気圏核爆弾実験の
“副産物”として生まれました。つまり1950年代に米ソ核軍拡競争のなかで、水爆の破壊
力の大きさを競って太平洋地域などでやたらと大気圏核実験が行なわれたのですが、これ
によってハワイで大停電が起きたことがありました。核爆発の際に発生する強力な電磁パ
ルスによって、都市部の電気設備の回路が焼き切れたからでした。これは軍にとっては予
想外のことで、軍民の電子・電気インフラを大規模に破壊するという“副作用”が伴うこ
とから、大気圏核実験だけは早々に米ソ間で“自粛”することになったわけです。(電磁
パルスの破壊的作用を気にせずにすむ地下核実験はまだ延々と続けられたのですけど
ね。)
米ソが数万発の核兵器を抱えてにらみ合っていた時代には、核兵器を使えば全面核戦
争になると想定されていました。核でやられても、確実にそれ以上の核で報復して相手を
絶滅させるには、アメリカ全土の核ミサイル基地などを結ぶ指揮・管制・通信体制を、電
磁パルスの大嵐の下で保全せねばなりません。そのための通信システム生き残り策として
模索されたのが、通信網の無定型・分散的なネットワーク化(つまりインターネット通
信)と、銅線に電流を流さないで通信メッセージを送る“光ケーブル通信”でした。
今回、イラクで使われると喧伝されているのは、この電磁パルス爆弾です。目的は
もっぱら、イラク周辺地域のあらゆる電子回路を破壊して、指揮・管制・通信・コン
ピュータ体制を破綻させることです。
3.ミサイルなどを粉砕する強力な高エネルギービーム兵器
こうしたマイクロ波兵器を搭載した軍用機も、アメリカ空軍は開発中です。その拠点
となっているのはニューメキシコ州の空軍基地でして、高エネルギービーム兵器として、
マイクロ波砲のほかにレーザー砲なども開発されています。これはミサイルなどに風穴を
明けて文字どおり粉砕するための、マンガなどに出てくるような強力な物理的破壊兵器で
す。
……ここからはちょっと不可解な話になりますが、先のスペースシャトル・コロンビ
ア号の空中分解直前に、空軍が望遠鏡でシャトルを撮影していたという話がありました
が、あの望遠鏡はこの空軍基地の高エネルギービーム兵器研究施設にあるもので、通常は
人工衛星にレーザーを当てて(主に測定などのため)それを観測するのに用いるものでし
た。しかし地上からレーザーをあてて人工衛星を破壊する技術も開発が進んでいて、中国
などが米国に抗議しているという動きもあります。シャトルの末期の写真はこの施設から
望遠撮影されていて、高エネルギービーム兵器研究所の広報官もそれを当初は認めていた
のに、いつのまにか「アマチュアの子供用望遠鏡でとった写真だった」というズッコケる
ような釈明にすり替えられました。
いまのところ、対物破壊用のビーム兵器としてはレーザー砲が有望ですが、これは80
年代のSDI構想で開発が本格化し、現在はミサイル防衛構想へと「看板」は変わりました
が開発と配備実験が進んでいます。そういえばこのニューメキシコ州の空軍基地が開発し
た(ミサイル防衛構想の構成要素としての)レーザー砲がミサイルを打ち落とすという実
験は、イスラエルと共同でおこなったものでしたが、コロンビアに搭乗していたイスラエ
ルのラモンは空軍の兵器開発・調達部門の幹部で現役の軍人のままシャトルに実験要員と
して乗っていたのでした。
4.非殺傷兵器としての“しびれ光線”
10年前に、冷戦が終わり核兵器開発研究機関(ローレンスリバモア等々)の存在意義
がなくなるというので、“水爆の父”エドワード・テラー博士などがあせって、新たな概
念の兵器を開発すべきだ、と唱えました。こうして“ポスト仮想敵国ソ連”として「なら
ずもの国家」という概念がデッチ上げられたのと同じ時期に発明された新たな兵器体系が
「非殺傷兵器」でした。興味ぶかいのは、「非殺傷兵器」体系の研究開発振興の音頭を
とったのは、陸軍のなかで“超能力の軍事利用”を長年唱えてきたジョン・アレグザン
ダーという人物でした。彼はオカルトとかUFOアブダクションとか多重人格をテーマにし
た研究集会なども組織しており、マインドコントロールや心理戦争への傾倒がうかがえま
す。
「非殺傷兵器」として、とりもち銃とか、すべって敵が歩けなくなる薬剤とか、そう
いうマンガじみたアイディアも開発課題になったのですが、注目すべきは、新型の生物化
学兵器(たとえばマイケル・クライトンのSF『アンドロメダ病原体』に出てくるようなゴ
ムを腐食させる微生物や、金属を腐食させる生物化学剤など)や、目つぶし用のレーザー
銃や、敵を“無能力化”するマイクロ波兵器なども開発課題になっていることです。こう
して相手の運動能力を一時的にうばう対人用のマイクロ波砲も2年くらいまえに開発さ
れ、海軍がデモ公開を行なっています。
5.電離層攪乱兵器(HAARP)
これも実験開始からもうすぐ10年になるのですが、米国の海軍と空軍は、アラスカ州
に、原発2基ぶんの電力をすべてマイクロ波に変えて、北極圏上空の電離層にそのマイク
ロ波を照射する「HAARP」プロジェクトという兵器を稼働させています。軍の説明によれ
ば、その主な用途は、【1】電離層の特性を変質させて電波に反射特性を操作し、通常な
ら届かないような遠方の電波をとらえることができるようにする、【2】世界各地の地下
の様子を“断層撮影”して地下施設などの探索を容易にする、ということだそうです。
【1】はありそうなはなしですが、【2】はちょっと荒唐無稽な話にも思えます。しかしこ
うしたSFちっくな用途はともかくとしても、確実に言えるのは鳥の渡りに悪影響が及ぶ
し、電磁スモッグによる環境破壊が懸念されるということです。欧米やロシアでは、これ
が環境兵器禁止条約に違反する気象改変兵器になるのではないか、と懸念する声もありま
す。
そのほか、これも電気回路に当然影響を及ぼしますから、爆弾を積んだ飛行機が近辺
をとおれば雷管を刺激して自爆が起きる恐れがある、という指摘もだされています。90年
代なかばまで、日本からはアンカレジ経由でアメリカにいく航空路があったわけですが、
いつのまにか廃止されたようです。ひょっとすると、HAARPが影響しているのかもしれま
せん。なにしろ、これが稼働中は、電子機器の塊である航空機は近寄れないでしょうか
ら。
ちなみに、50〜60年代の核実験が地軸の変動や地震の発生を促すことはすでに確認され
ています。(←電磁波兵器には関係ない話ですけど。) HAARPは地球の大気の循環に
影響を与えて異常気象の原因になっているのではないか、という気がするのですが、太陽
エネルギーなどに比べれば微々たるものなので、決定的な関与はないかもしれません。し
かし、テコの支点のように、それ自体は大きなポテンシャルをもたなくても、重要な影響
を及ぼしている可能性もあるのかもしれません。
●以下は、イラクで使われるであろうと宣伝されている「電磁パルス爆弾」の記事です。
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2002年8月26日
イラク戦に電磁波兵器開発 英企業が開発、と英紙
【ロンドン26日共同】26日付の英紙デーリー・テレグラフによる
と、電子機器を使えなくする強力な電磁波を発する通称「E爆弾」を英
国の企業が開発中で、米国防総省が対イラク攻撃作戦で生物・化学兵器
を無力化する目的で使用を計画している。
E爆弾は爆発はしないが、投下後にアンテナを張り出し、核爆発で発
生する電磁波と同様の数十億ワット規模の極超短波を照射。排気ダクト
などを通じて武器庫に到達し、薬品などの低温貯蔵施設やコンピュータ
ーのシステムを破壊、生物・化学兵器を使えなくするという。
米軍事筋は、開発の最終段階にあるE爆弾の早期配備を望んでいると
いう。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=GIF&PG=STORY&NGID=AITN&NWID=A3132610
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2003年1月20日付け・産経新聞
米、秘密兵器は「マイクロ波」?
米タイム誌は19日、対イラク武力行使が行われた場合に、強力な電波で電子部品を破
壊する「高出力マイクロ波」(HPM)が米国の“秘密兵器”となる、と報じた。
HPMは、強力な電磁パルスを放出する能力を持ち、300メートル以内にある電子部
品をショートさせ、コンピューターなどを破壊。生物・化学兵器の製造や貯蔵、発射シス
テムなどに障害を起こさせるという。一瞬で放出できる電力は20億ワットに上る。
HPMは、航空機が搭載している電子システムに影響を与える恐れもあるため、米国は
長距離巡航ミサイルに搭載することを検討しているという。(共同)
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WIRED NEWS
米軍、マイクロ波パルスでイラク軍を麻痺させる「電磁波爆弾」投入か
AP通信
2003年3月19日 3:00pm PT 米軍はイラク攻撃に、21世紀の奇襲作戦として「電磁波爆
弾」を使うかもしれない。イラク軍の目と耳をふさぎ、意思疎通もできなくして、反撃を
不可能にするのだ。
機密扱いになっているこの爆弾は、強力なマイクロ波パルスを発生させる。このパルス
によって、コンピューターを破壊し、レーダーを麻痺させ、無線を遮断し、壊滅的な停電
を引き起こし、車両や航空機のエンジンの電子点火装置を機能しなくしてしまう。
米国バージニア州アーリントンに拠点を置くシンクタンク、レキシントン研究所の防衛
アナリスト、ローレン・トンプソン氏は、「この爆弾は、電子機器に依存するあらゆる敵
に対して有効だ」と言う。
現代の戦争では、銃や手榴弾のような原始的なものを除いて、あらゆる兵器が電子的に
制御されている。そのため、米空軍の科学者たちは10年以上にわたって、建物や人間を傷
つけずに電子機器を破壊できるような、強力なマイクロ波パルスを発生させる技術に取り
組んできた。
米国防総省は公式にはこの兵器の存在を認めていない。3月5日の国防総省の記者会見
で、トミー・フランクス司令官は、「その件については知らないので何も話せない」と述
べた。
しかし、軍事アナリストたちは機密扱いでないいくつかの文書から、こうした装置がす
でに開発されていることがうかがえると話している。
「国防総省内部や軍事専門誌では、電磁波爆弾が試験中だという話があちこちでささや
かれている」とトンプソン氏は言う。
エレイン・M・ウォーリング空軍大佐は2000年に、ニューメキシコ州のカートランド空
軍基地の科学者たちが最大でネバダ州のフーバーダムが1日に生産する量の10倍にあたる
エネルギーを放射するマイクロ波の発生装置を開発した、という報告書を発表している。
こうした強力なマイクロ波パルスは、建物や人間に影響を及ぼさずに電子機器を麻痺さ
せることができるため、民間人に犠牲者を出したくない場合には魅力的な兵器となる。
テストでは、このマイクロ波パルスをシリコンチップに放射すると、回路に過大な電流
が流れてチップは溶けてしまった。だが実際の戦場では、最も強力な電磁波爆弾であって
も、距離が大きくなると効果は急激に減少する。電磁波爆弾の威力は機密となっている
が、軍事アナリストたちは効力の及ぶ範囲をせいぜい200〜300メートルと見込んでいる。
この程度の範囲にしか影響しないのであれば、電磁波爆弾による攻撃は、病院や孤児院
などの民間施設に被害を与えずにすむ。ただし、こういったインフラが軍事目標に隣接し
ていたりネットワークでつながっていたりすれば、話は別だ。
「たいていの場合、電磁波爆弾はこれまでの兵器より人道的だと思う」とトンプソン
氏。
アナリストたちは、この爆弾がどれだけの効果を上げるかということも予測がつかない
と話している。マイクロ波パルスによって生じる過大な電流は、付近にある軍のスーパー
コンピューターに直接流れる可能性もあるが、ただ地面に流れて何の害も及ぼさないとい
うこともありうる。
「この爆弾は標的を定めにくい。エネルギーが電線などの導電性のある物質に吸収され
ると、その後どこに行ってしまうかはわからない」とトンプソン氏は言う。
こうした不確定要素が多いため、電磁波爆弾は今回のイラク攻撃では大きな役割を果た
せないかもしれない、と防衛政策のシンクタンクであるグローバルセキュリティーの軍事
アナリスト、ピアーズ・ウッド中佐は述べている。
「何人かの司令官は実際にこの爆弾を試せるだろう」とウッド中佐は言う。「だが、こ
れが倉庫にいっぱいあるというわけではない」
軍事専門家たちは、電磁波が核兵器を使わなければ破壊できないほど地中深くに作られ
た地下施設に到達できるかどうかを、とくに知りたがっている。電磁波爆弾によって電力
が供給されなくなると、照明、セキュリティー・システム、換気装置、コンピューターを
使えなくなり、地下施設は居住不能になる可能性がある。
ウッド中佐は、最終的には他の国々も強力なマイクロ波兵器を手に入れるかもしれない
と言う。ハイテクに大きく依存している米軍は、こうした兵器にはとくに弱い。米軍は強
力なマイクロ波を防ぐため、近いうちにすべての軍事用電子機器を金属で覆い、あらゆる
配線に高性能のブレーカーをつけざるを得なくなるだろうと、ウッド中佐は予測してい
る。
[日本語版:遠山美智子/鎌田真由子]
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